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「戻ったとして、再び心が動くとでも言いたいの?!」
「……………」
何も言わない朔月に苛立ちが募った有明が、立ち上がり勢いに任せて手を薙ぎ払う。
パンっっと乾いた音と共に朔月の顔の半分を隠していた狐のお面が外れ、床に音を立てて床に転がり、けたたましい音が静まり返った社に響き渡った。
「莫迦にしないで!!
貴方はいつもそう…。
そうやって涼しい顔して、私から何もかもを奪って行く!!
私の望むものは全て!!生まれた時からよ!!!」
泣きそうな声。
それは面が取れた朔月の素顔を見た瞬間に更に強まった。
目の前には無表情で、逆に感情を乱している自分を、ただ眺めているような妹の顔。
何度見てもゾッとするほど浮世離れした美しさに、見ている方が居た堪れなくなる。
「出て行きなさいっっ!!
その顔を私に見せないで…」
そう言うなり、有明は糸が切れた様にその場にへたり込んでしまった。
その様子を無表情の朔月の瞳が見下ろしている。
真っ白な頬からは、先ほど薙ぎ払われた有明の手の爪によって皮膚が抉られ、紅い紅い鮮血が伝って零れ落ちた。
双方ピクリとも動かずに静寂に包まれる中、その沈黙を破ったのは狐面でしっかり顔を隠した全てが真っ白の男だった。
「朔月。傷の手当てをいたしましょう」
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