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淡々とした落ち着いた声。
「朔月。気が逃げます」
反応しない朔月に、繊月は強めに声を飛ばし、やっと朔月は頬の痛みに気付き、そっと頬へと手を触れた。
ヌルっとした感触と共にチクリとした痛みが走り、そこで初めて顔に傷がついたことを知る。
「あぁ」
血の付いた手を眺め、納得した様な声を出し、それを茫然と眺めた後、背に繊月の強い視線を受け、朔月は静かに踵を返した。
その場に有明が居る事に、既に興味がないのか、一度も視線を戻す事無く、やがて静かな足音と共に、朔月と繊月の気配は社から遠ざかって行った。
-----……クス……クスクス……
何処かで鈴の音の様な笑い声が聞こえた気がした。
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