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宮殿で生まれた特別な御子。
その存在を初めて見たのは、御子が生まれて数年の時が経った後。
それは偶然だったのか、必然だったのか、白い社に出向いた時だった。
何の目的で行ったのかももう覚えてないが、鳥居も社も全てが真っ白な空間に、それは浮き上がった様に存在していた。
真っ黒な髪は背の中間程度で切りそろえられ、前髪も眉の上で切りそろえられていて、露わになっているその容姿は幼子であるにもかかわらず、驚くほどに整っていた。
彼女の種族を考えれば、それは特別な事ではないのかもしれないが、ゾッとするような美しさに目を離せなかった。
「………あぁ。
もしかして、若宮様でございまするか?」
子供にしては落ち着いた声。
その瞬間、きっと自分は恋をしたのだと思う。
初めて自分をまっすぐに見つめる存在に、愚かにも一目で落ちてしまったのだ。
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