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――――――――――――――……
「望月様」
呼ばれて目を開ける。
ぼんやりしている視界に黒い長い黒髪と、白い肌が滲んで見えた。
「………有…明?」
呼べば、クスリと笑う気配がして、ひんやりした手が頬に当てられる。
その手の冷たさに、寝ぼけた思考が開けていき、晴れた視界に映った人物が、自分の呼んだ相手と違う事を認識し、慌てて身を起こした。
「…これは……朔月殿…失礼した」
「いえ。眠れましたか?」
首を振って、微笑む彼女の顔はやはり半分が狐の面で隠されていて全容をうかがる事は出来ない。
聞かれて、開かれた襖から見える庭を見ると、明るい空が見え、自分が朝まで眠っていた事を知る。
「どうやらそのようだ」
苦笑して頷けば、朔月は安堵した様に息を吐きだし、再び望月に微笑んだ。
「朝餉の用意をいたしました。
差し支えなければ、一緒にお召し上がりになりませんか?」
「え…あ……いや、よろしいのか?」
「一人で食べても味気ないでございましょう?」
戸惑って返せば、逆にキョトンとした朔月に不思議そうに見返され、望月はどうしていいかわからなくなる。
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