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「望月様?
朝餉の用意が出来ております。朔月もお待ちでございますが、
----望月様?いかがかなさいましたか?」
しかし、そこに立っていた相手に驚き、望月は更に目を見開いた。
廊下には狐面を付けた白い男、繊月が首を傾げて呆けたような望月を見ている。
声を掛けても反応の無い望月に、更に不思議そうに首を傾げて、望月の前までやってくると、少し背を屈めさせて望月の顔を覗きこみ、彼の顔の前で数回手を振った。
「うわっっ」
それにハッとした様に反応した望月が、目の前に屈んだ繊月の狐面に焦点を合わせ、驚いたように僅かに身を引く。
「どうかされましたか?」
その望月の様子を気にした風でも無く、繊月は屈めた背を伸ばすと、不思議そうに望月に顔を向けた。
その表情は狐の面で隠されているので、窺う事は出来ないが、首を傾げているところを見ると、きっと怪訝そうな顔をしているのだろう。
「いや、何でも…」
途端に一人で取り乱していた自分が滑稽になり、望月は慌てて否定をする。
「はあ。そうでございまするか」
と繊月は容易に納得した様で、コクリ頷くと、再び足を廊下へと向けた。
「朝餉の用意が出来ましてございまする。
朔月もお待ちでございます。どうぞこちらへ」
「あ…あぁ……」
促されるまま繊月の後を追って望月は部屋を出る。
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