第三夜

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立っているのは背の高い、男。 朔月が入っている湖のほとりに静かに立っている。 肌の色は白く、長く伸びている髪も白い。 顔は狐面で隠されていて、頭には髪と同じ色の毛並みの耳、 そして、後ろ手でふわりと揺れる尾が見えた。 「風邪を引きますよ?」 言われてコクリと頷いて、朔月は岸辺へと向けて足を動かした。 ちらり水面に視線を向けると、 自分の頭部と尻部にも同じようにふわふわとした耳と尾が生えている。 朔月は完全に湖から出ると、水滴を払うように耳と尾を震わせた。 「繊月」 それから男の名を呼ぶと、彼は心得ているように、浴衣の袖を朔月に向けて広げる。 表情は読めない。 気にすることなく朔月は差し出された浴衣に向けて袖を通して身体に滴る水滴を拭く。
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