プロローグ

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 冬の終わりを告げ、若干ながら暖かな風が春を感じさせる四月の朝の事。 俺、芹沢冬夜は今年で高校を卒業する……予定。 朝、いつものように目を覚まし、ふと視点を横にずらす。今日も橘真希が寝息を立てて俺の隣でスヤスヤ眠っている。  ――橘真希。俺の幼馴染みでも大切な彼女でもある。真希とは二年前から付き合いはじめて、昔は朝早く俺を起こしに来ることがあったが、付き合う事になってから毎日のように布団に潜り込み俺に起こされるまで眠っている。  それ故、最初はめちゃくちゃドキドキしたが、今現在はすっかり慣れてこれも日常の一つだと認識するほどまでになってしまっている……。 「おい、真希起きろ~」 「……う~ん、もうすこし~」  甘えた声で言われると凄く可愛くてもう少し寝かしたい気持ちになるが、それでも起きてもらわないと困るわけで……。 「起きたら一杯ぎゅーってしてあげるから、ね?」 「……もう、ぎゅーってしてるからいいよ……むにゃむにゃ」  真希に抱きつかれて身動きがとれない状況にあるわけで……この現状に陥ったら助け船が来ない限り抜け出すのが難しい……。  過去にあんな事やこんな事を試みたが、全て逆効果で痛い目に遭った故、もうそれしか手段がないのである。  仕方無く俺は誰かが助けに来てくれるまで二度寝を決行した。
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