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男がマチルダを持ち上げるのと同時に、マチルダが跳躍しながら数本のナイフを投げた。
「身体を重ねるだけが……愛じゃないでしょう?」
ギャラリーの中で倒れる複数の影。
「確かに」
男が苦笑する。
「貴女のおかげで、思ったより早く片付きそうだ」
男もターンをしながら、ナイフを同時に数本投げる。
「そりゃ、どうも」
答えるマチルダに男が微笑んだ。
「決めた」
「何を?」
「この仕事が終わった後に貰う……親父からの報酬」
「親父?」
「そう。貴女だ。俺に譲ってくれってね」
それを聞いたマチルダが苦笑する。
「踊りの報酬にヨシュアがサロメの命を所望するなんて……聞いたことないわよ?」
「斬新でいいじゃん。それに……俺はあんたの良い人と違って……『救世主』って柄じゃないから」
いつの間にか、周囲を取り囲んでいた殺気は消えていた。
「引き際をよくわかってるね、政府のネズミは」
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