LiberTango

2/25
前へ
/27ページ
次へ
その一団がパーティー会場に現れた時――一瞬にしてパーティー会場が静寂に包まれた。 先頭を歩く壮年の男。アルマーニのスーツを軽く着崩し、蠱惑的な色気を振り撒いている。 その半歩後ろ。 長い金髪をなびかせ、端正な顔に微笑みを浮かべ、けれども冷徹な空気を放ちながら、黒い詰襟風のスーツを着た若い男が従い歩く。 さながら――主人に従うドーベルマンのように―― 少し遅れて、二人の男女が歩く。 着なれないタキシードに緊張した面持ちの――その眼の奥に熱い情熱を秘めた男が、真紅のドレスに身を包んだ美しい女性をエスコートしながら。 そして最後尾を歩く女。 華やかな真紅のドレスとは対照的な黒のカクテルドレスを着た女。 アクセサリーは小さな銀のピアスのみ。 だが、それがかえって女の魅力を引き出していた。 静寂に包まれたパーティー会場をその一団は臆する事なく闊歩する。 光と闇。陰と陽。 相反する魅力を振り撒きながら歩くその一団を見て、パーティー会場のギャラリー達は確信する。 このパーティーの主役達が――登場したのだと――
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加