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* * * *
――疲れた。
熱気に包まれたパーティー会場の端で、黒いカクテルドレスの女――六代目毒婦マチルダは、思わずため息をこぼしそうになった。
だいたいが自分はこんな場所は苦手なんだよと、マチルダは心の中で毒づく。
しかし、そうも言ってられない。
自分の事より、最優先しなければならない事があるからだ。
五代目ノートリックス総帥光姫琥太郎とその伴侶ぬこの身辺警護。
(全く……。確かに佐多オヤジの言う通り、いろんな方面に顔を売っておくのは必要かもしれないけどさ……)
そう思いながら、パーティーの中心でたくさんの人に囲まれている光姫とぬこを見やる。
(総帥もこういう場所は苦手だし……大丈夫かね……)
人に揉まれ、四苦八苦している二人を見ながら、再びため息をこぼしそうになる。
そんなマチルダに近付く一人の男が居た。
「六代目」
美しい金の髪。端正な顔つきに微笑みを浮かべたその男。
「寒波さん……」
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