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沈黙が少し続いた後、マチルダがそれを破るように口を開いた。
「……やっぱこの空気。耐えられん。寒波さん、ゴメン。5分で戻るから、私、そこのエントランスで外の空気吸ってくる。ちょっとだけ……総帥とぬこ様の事、頼むね」
そう言って、カツカツとヒールを鳴らしながら、その場から離れてしまった。
それを見ながら、寒波が苦笑する。
「構いませんよ。おそらく……ゆっくりできるのは“今だけ”ですから」
寒波の何かを含んだようなその言葉は――マチルダには届いていなかった――
――――
パーティー会場のエントランスで夜風に当たりながら、マチルダは小さく安堵のため息を吐いた。
(帰りたい……。帰ってゆっくり寝たい!!)
つい、子供のような駄々を考えてしまう。
(ったく……。佐多オヤジめ……。何が『俺がパイプ役になってやるから、顔を売っておけ、俺のメンツを潰すなよ』だよ……。あんな事言われたら……二人とも断りにくいだろが……。相変わらずゴウイングマイウェイというか……)
ぶつぶつと愚痴をこぼしている時だった。
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