0人が本棚に入れています
本棚に追加
東日本大震災が起きる、数年前。
福島県の沿岸部にあるとある小さな町、
季節は冬、冷たい風が吹き荒れ雪も舞っていた。
畑の中の一軒家、家の中には小学生の少年が一人いた。
そこに来客あり。
「小次郎、母さんは。」
「すぐ戻ると言って一昨日から帰って来ないよ。」
「何帰ってこねえ、家賃もたまってるし。
まったくどこに行った。 寒いな、小次郎 灯油あるのか。」
「ないよ。」
「まあいいさ、後で持って来てやっから。」
この時小次郎は見捨てれたと悟ったのだった。
数年後。
父親と母方の祖母。
小次郎の父親は悪質な詐欺商法で実刑判決を受け服役して。刑期が解かれ帰郷して母方の祖母と会っていた。
「婆さん元気かや。」
「なんだ生きてたのか務所帰り。
オメエの女房は家出、小次郎は仙台の施設だよ。」
「家出、施設どのような意味だ。」
「知らねえよ。とにかく二人はここにはいね。」
「そうか、俺が逮捕され仕送りが途絶えだろうからな。」
「何が仕送りだ、どうせ人様から巻き上げた金だろう。」
「婆さんなあ、なんでもかんでも疑うじゃないよ。」
「ならなんで戻って来た。」
最初のコメントを投稿しよう!