エピローグ

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都内某所のホテル。 有名なフランス料理店に エリカと父の洋一はいた。 「エリカと2人で食事を摂るのは久しぶりだな」 ナフキンを胸元につけながら洋一が話しかけると 『ずっと忙しかったから。私もパパも』 エリカもナイフとフォークを手に答えた。 「ああ。全くだ」 洋一が笑顔を浮かべる。 『救済はすすんでる?』 「ああ。24時間電話が鳴りっぱなしだが だいぶ落ち着いてきたかな」 『それなら良かった』 「臨時に予算組して救済する為の借入金も融資を行っているよ」 『利息で稼いじゃ駄目よ、パパ』 「ははは。わかってるよ。ほとんど無利子だ。 今回の告発は様々な波紋を広げ 細かいところまで見なければならない」 『悪を制したら、それを正しく導くまでが私たちの役目だから』 「お前にはかなわん」 洋一が目を細めエリカを見つめる。 『パパ』 「なんだい?」 『ありがとう』 エリカの言葉を聞き ふっと洋一が溜め息をついた。 「それが父さんの仕事さ」 『国民の皆様のために!でしょ?』 「ああ、そうだ」 洋一の返事を聞きエリカが満足そうに笑う。 『まだまだ、これからよ』 「父さんは心臓がいくつあっても足りないな」 また洋一が笑う。 『パパたちにも大変な思いをさせてしまうけれど。 私はこの仕事に誇りを持ってるの。 国税庁も局の皆も同じ気持ちよ』 「わかってるよ」 『良かった。じゃあ 冷めない内に頂きましょ』 『いただきます』 そう言ってフランス料理を食べ始めたエリカを しばらく洋一は眺めていた。 妻の百合子にそっくりな娘は 百合子に代わって常に自分を正しい道へと 誘(いざな)ってくれる。 (百合子) 洋一は心の中で そっと妻の名を呼びかけた。 『パパも早く食べなきゃ!』 「ああ。いただきます」 エリカに急かされ慌てて洋一も食べ始めた。 親子水入らずの楽しい時間が 穏やかに過ぎていった。
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