2人が本棚に入れています
本棚に追加
少年は、村人たちの反対を押し切って、魔王討伐の旅にでます。
少年はくじけ、転び、何度も魔王の手下に殺されそうになりながらも、決して諦めることはありませんでした。
魔王に挑む少年の噂は各地に広がっていき、そのことに感化したとある国の王が、少年に力とかつて国を救った勇者の名を授けます。そしてこう言いました。
「炎の意思を継ぎし勇敢なる少年に光の加護を」と。
少年は王たちに見送られ、魔王の住む城に単騎で挑みます。数多の魔王の手下を払いのけ、そして魔王がいる玉座の間に辿り着きました。
ついに魔王との決戦です。人間と悪魔の存亡を賭けた戦いの火蓋が切って落とされます。二人の戦いは玉座の間を崩壊寸前に追い込むほど、激しい戦いでした。そして激闘の末、残念ながら少年は、魔王に負けてしまいました。いくつもの村や国を堕とし、野心高い悪魔を束ねている魔王の方が上手(うわて)だったのです。
所詮は、名の知られていない村から正義心で旅立った少年は、あくまでただの少年でした。
強力な力の前に、少年は自分の非力さを憎み力尽きました。
平和は訪れず、伝説は生まれません。魔王は、少年が現れる前のように人間たちの恐怖の存在として生き続けます。以降、魔王に挑んだ気高き少年は、誰にも語りつかれず人々の記憶から消えていきました。少年は勇者にはなれなかったのです。
最初のコメントを投稿しよう!