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――その日私は、人生で最大の罪を犯した。
たった一度の、赦されない行為である。
赦されなくても構わないと思った。
天罰が下るのなら、それでも構わない。
歯止めを効かなくさせたのは、焦がれ続けた彼女が持ってきたダリアだった。
花言葉は、【あなたのことだけを考えています】。
翌日、結婚式の招待状と一緒に届いたのは、ばら色のダリアだった。
【あなたの気持ちが分かって、喜んでいます】。
送られてきたのがダリアだけだったならば、私はどんなにか幸せだっただろう。
天罰は、確かに下ったようだ。
私が5年前彼女を受け止めなかったことに対する天罰なのか、それとも今更になって彼女を受け入れてしまったことに対する天罰なのかは分からないが。
披露宴でカラードレスに着替えた彼女の、髪を飾るダリアの色も変わっていた。
赤いダリアの意味は【溢れる喜び】、そしてもうひとつ――。
ついに私は、彼女への想いを口にしなかった。
そして彼女もまた、再会以降一度も、その言葉を口にしなかった。
私は一度きりの過ちを胸に秘めたまま、この想いを今日封印する。
そして彼女の育ての親として、これからはただ、彼女の幸せを願う。
【あなたの愛が、私を幸せにします】
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