Dahlia

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司会者のアナウンスに続き、パイプオルガンとフルートが静かに祝福の旋律を奏で始める。 重厚な扉が音を立てずにゆっくり開いた時、空間には確かに光が差した。 後光を背負った君は、聖母マリアそのものだった。 エスコートする父親はいない。 天涯孤独の彼女を守ってきたのは、他ならぬ私なのだ。 彼女は一人でその道を進んでくる。 真っ直ぐに、迷いない足取りで。 マリアベールが、少し下を向いた彼女の顔を隠した。 『地味すぎないかい』 事前にドレスを見せられた時に述べた感想がとんでもない間違いであったことを、私は知った。 マーメイドラインと呼ぶらしい、その細身のシルエットは彼女の美しさを際立てていた。 自分を一番綺麗に見せる方法を、彼女は良く知っている。 一歩、一歩と君が進むたび、うっとりとその行進に見惚れていた参列客の後ろの席から順に溜息があがった。 ドレスのロングトレインとその上を行くロングベールが見せる後ろ姿も、さぞ華麗なのであろう。 顔を上げた彼女と、視線が絡んだ。 ――おいで、早く。私のところへ。 歩調は乱れない。 迷いは見えない。 すっと目を閉じた君が、微笑んだ。
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