3269人が本棚に入れています
本棚に追加
森山くんは、制服のポケットに手を入れ、手のひらサイズの何かを取り出した。
それ……は……。
「なぁ、この生徒手帳、俺の机に入れたのって水野?」
「――!? な、なん……で」
何で知ってるの?
まさか、見られてた?
誰もいないと思っていたのに。
「水野って、俺のこと好きでいてくれたと思ってたんだけど、違った?」
「っ……!」
それも、ばれてる。
当たり前だけど。
言葉を探して黙っていると、腕を掴む手に力がこもって、
「何で逃げんの?」
「だ、だって……」
森山くんには、好きな人がいるから。
好きになっても、叶わないから。
……森山くんが好きなのは、私じゃないから。
改めて考えたら、言葉よりも先に涙がポロポロ溢れてきた。
「えっ!? ちょっ……、え!?」
尖るような声が、一瞬で柔らかいものに変わる。
ビックリしてる。
違う……、泣きたいんじゃないのに。
最初のコメントを投稿しよう!