3262人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
――私、水野茅奈は、一週間ほど前から、とても困っている。
「なー、誰かさぁ、俺の生徒手帳知んね?」
一時間目が始まる、二分前。
机の上に授業の準備をした後、隣から聞こえた声に、肩がビクッと震えた。
――きた。ついに……!
恐る恐る隣の席に目線を移すと、そこには茶髪の男子の姿。
森山智宏。
「生徒手帳ぉ? お前のなんか、分かんねっつの」
「無くしたの?」
彼の近くにいるクラスメイトが、次々と声をかける。
森山くんは、バッグをガサガサかき回したり、机を斜めに傾けて腕を突っ込んだりしている。
心臓の音が速くなる。
チャイム、鳴って。早く。
最初のコメントを投稿しよう!