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「それ貸したのって、あれだろ? 隣の席の……、えーと」 「水野な。水野茅奈」 フルネームが、森山くんの口から……。 というか、私の話題が……。 「ふーん、水野ねぇ……」 「なんだよ?」 宮本くんが、含みのある言葉で私の名前を呼ぶ。 なんだろう。 何を言うつもりで……。 「水野ってさ、地味でおとなしくて分かりにくいけど、実は結構可愛くね?」 !! み、宮本くん!? 何を聞いてるの!? 思わず声を上げてしまうところだった。 まさかとは思うけど……、宮本くんは、私の気持ちに気づいて、わざとそんなことを……? 森山くん、どう答えるかな。 教室の外での盗み聞きだから、表情が見えない。 ドキドキしながら、その時を待つと…… 「……別に。言うほどでもねーだろ」 全身に、雷が落ちたみたいな衝撃に、動けなくなった。 手が、冷たくて痺れる。
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