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それから、しばらく経って教室に戻ると、誰もいなくなっていた。 今まで持っていた生徒手帳を、隣の席の引き出しに入れる。 それまでは、返したくても返せなくて、困るばかりだったのに。 こんなにあっさりと手放す日が来るなんて。 それがまるで、誰かに「諦めなさい」って言われてるように感じた。 森山くん。 隣の席の森山くん。 私はあなたが苦手です。 前から。 そして、今だって。 どう近づいていいのか、いつも分からない。 あなたの言葉に、行動に、一喜一憂させられて、どうしていいのか分からなくなる。 森山くんは、きっとそんなこと知らない。 私が勝手に、何も言わずに好きでいただけだから。
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