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家のすぐ傍の大通りに出て横断歩道を渡る。あとちょっとでこの子たちを温めて御飯もあげられるって気が緩んだ時だった。
いきなりの突風で傘が飛ばされた。
そこからは目映るものすべてがスローモーションのようにゆっくり流れていった。
傘を追って振り向いた視線の先で、突風に煽られてハンドルを取られて焦っている大型トラックの運転手と目が合った。
すぐ傍のはずが総の声が遠くに聞こえる。
逃げなきゃと思うのに、頭では動こうとしているのに体は全く動かなくて。
死ぬのかな、なんて考えが浮かんだとき目の前を塞がれてよく知るぬくもりと香りに包まれた。
「そ──っ」
総の肩口から間近に迫ったトラックが見え、咄嗟に総に強くしがみつきぎゅっと目を瞑った。
「「ニャー」」
場違いな可愛らしい声がダブルで聞こえた気がした直後、僕らの意識は途絶えた。
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