ぼく藤田。

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オレは藤田。ホームレスだ。いや、待てよ?これだけだとただのホームレスと勘違いされるではないか。オレはただのホームレスではない、強いて言えばエリートホームレス! そう、聞いてくれオレの悲惨な人生を… オレは生まれも育ちもエリートな人間だ。その上容姿も完璧、頭脳も優秀のいわゆる非の打ち所がない完璧すぎる青年ときた。 そんなオレがなぜ今ホームレスなのかというと、話は長くなる。 藤田グループ財閥の一人息子に生まれたオレは、幼いころから一流の教育を受けさせられた。藤田グループの跡取りとして大事に育てられ、誰もが羨む容姿と完璧な頭、ついでに抜群の運動神経を持った最高の人間になった。 まぁ…性格だけはかなり捻じ曲がっていたがな。 オレには富も名誉もあったので、毎日好き勝手しまくっていた。金使いも荒く、喧嘩も日課のような生活を送っていたような気がする。おかげで喧嘩は今でもやたら強い。 何よりもオレは人一倍性欲が強かった。メイドや執事、ありとあらゆるものに手を出したっけ。オレの顔のおかげで、ほとんどすんなり落とせたけどね! まぁそんな出来事が主な原因となり、両親ともに激怒したのが2年前。 父親には「お前が反省するまで家には入れん!外でしっかり頭を冷やしてこい!」とか言われ、母親には「お金も渡しませんし、カードも止めますわ!自分でちゃんと働いて生活なさい」とか言われた。 だがしかし!オレはそんなことで挫けるようなヤワな人間ではない! 「こんな家、こっちから願い下げだ。後で泣いて謝ってもオレは戻らないからな。覚えておけ」 と言い捨てて家を出てやったさ。 ふと自分の手を見ると、何も持ってないことに気づいた。 …服は?あれ?服とかは? オレは家の扉を連打して「ぱぱぁ!ままぁ!」と一晩中叫び続けたが、その扉が開くことはなかった…。泣いたさ。 でもでも負けないんだから!オレは立派に生きてやるんだ!と、のぼってくる朝日に誓ったのだった。 …という訳で今オレはホームレスなんだ。どうだ泣ける物語だろう。
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