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「・・・いくぞ!キザミ!ハァァアア!!」
叫び声と同時に少年は地面を強く蹴り出し一気にキザミとの距離を詰める。そのスピードから彼が重傷人だとは微塵も感じられないほどキレのある素早い動き、
それでいてどんな反撃にも対応できそうな柔軟さを兼ね備えた猛進だ。
「喰らえキザミ!!」
少年の竹刀がキザミに振り上げられたその瞬間、キザミの顔に再び笑みが戻った。しかもそれは少年を嘲笑うような少し恐怖や狂気を含んだようなものだった。
「馬鹿はお前だよ、この馬鹿」
「・・・・・・グッハァッ!!?」
少年がキザミを切りつける直前のその刹那、先ほどの刺された矢の数十センチ右斜め下を別の弓矢が射抜いた。竹刀はキザミの右肩を少しかすめるが、少年の手から離れカラカラと音をたててアスファルトに横たわる。それを追うように少年も力なくそこに崩れた。
「くくく・・・っふははは!バーカバーカ!この戦いはチーム戦なんだよ!そんな常識も分かんねぇ馬鹿はそこで馬鹿みたいに死んでろ!アハハハハ!!」
勘に障るキザミの笑い声も耳に入らない朦朧とした意識の中、少年は背後から近づいてくるもう一人の人物の存在を僅かに感じた。しかし今更気付いたところでどうしようもない。徐々に重くなっていく目蓋に必死に抵抗しつつも、その視界は確実に黒く深く染まっていくのであった。
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