一章 希望と絶望のセレモニー

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「おーい!ミナト!茶菓子まだかー?」 剣刀館の、簡素だがどこか趣きのある道場内になんとも気の抜けた声が響き渡る。道場と言っても普通の道場とは違い、その広さは普通の道場と比べると軽く三倍はあるように思う。 そのうえ冷暖房完備で床暖房まで完備しているのだから、かつての電気のなかった時代の先人達が見たら怒られそうなものである。 その無駄にだだっ広い道場の角で剣道着に身を包み、一人あぐらを組みんでズルズルと茶をすする一人の少年、彼がどうやらさきほどの声の主のようだ。 「すいませ~ん!すぐにお持ちしま~っす!・・・ってうわぁ!!」 ガシャーン!という陶器が地面に激しく叩きつけられたような豪快な音が道場入口付近の給湯室から聞こえた。 しかし少年はまるで聞きなれた慣れたものというように相変わらず茶をすすり続けている。 「あら、大丈夫ミナト君怪我はない?」 『あわわわ、だ、大丈夫っす部長・・・・・・あー!!琴雪堂の芋ようかんが帰らぬ人にぃ!!』 おしとやかで品のある声が気遣いを見せているようなのだが、事故の張本人はそれどころではないかのように盛大に取り乱していた。 どうやら、ここらでかなり人気の高い和菓子屋『琴雪堂』の一番人気の商品である高級芋ようかんを全て床に食わしてしまったようだ。
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