0人が本棚に入れています
本棚に追加
しばらく体育館の二階の手すりから見学していた。
広い体育館の右側は女子で、左側は男子。
間は緑色のネットで仕切られている。
思わず目が、左側に移る。
須藤先輩は、中学の時と変わらない、キレのあるプレーを繰り広げている。
先輩はその容姿と運動神経の良さで、女子に人気がある。
でも誰とも付き合わないで、バスケ一筋。
それもまた、先輩の株を上げているんだ。
私は、そんな女子の一人。
付き合おうなんて、ましてや、好きだなんて思うこともおこがましいと思っている。
憧れ。
そう。ただ私は、須藤先輩に憧れている。
そんなことをぼんやり考えていたら、気付くとその人が私のことを呼んでいた。
「北原っ!!」
にこっ、と笑って先輩が手を振る。
「降りてきなよ。一緒にやろう!」
「えっ!でも先輩、私今日ジャージ持ってない、」
「いいよそんなの!俺のやつ貸すからっ!」
先輩が更衣室に消えていく。
私は驚いてその場に立ち尽くした。
でも、嬉しい気持ちで次第に胸がいっぱいになって……
そして全速力で階段を駆け下りた。
「北原、これに着替えて!ちょっとおっきいかもな!」
「ありがとうございます!」
須藤先輩が楽しそうな顔で笑う。
高校生って、いいな!
先輩の香りのするジャージを胸に抱えながら、私は思った。
最初のコメントを投稿しよう!