第1話

8/25
前へ
/25ページ
次へ
*  *  *  *  *  *  *  *  *  *   久しぶりに思いっきり体を動かして、家に着くころには心地よい疲労感に包まれていた。 「ただいま!」 「真衣、おかえり!」 「お姉ちゃんおかえり!」 「真衣姉ちゃん、おかえり!」 「おう、真衣!」 「おかえり、姉貴。」 みんなの笑顔がはじける。 私の自慢の、仲良しの家族だ。 お父さん、お母さん、それから一つ下の妹、恵。二つ下の弟、勇樹。そして九つも年が離れている、可愛い末っ子、香奈。 両親は自営業のパン屋さんを経営している。 最近では町で人気のパン屋さんになり、至る所からお客さんがやってくる。 売れ残るパンがほとんどない日だってあるくらいだ。 料理上手の母はいつもおいしいご飯を用意してくれるし、家族思いの父はたまに週末店を閉めて連れ出してくれたりする。 四人兄弟でこんなにも幸せに暮らせているのは、そんな両親のおかげなんだ。 「真衣姉ちゃん、今日ね、小学校でね、」 「姉貴、今日さ、」 「お姉ちゃん、聞いてよ、」 「待って待って。まず香奈ちゃんから。」 かけがえのない家族。 こぼれる笑顔。 この幸せが続くならば、私は何でもできる。 長女だから、しっかりしなくちゃといつも思っていて。 出来の良い姉だと褒められるけれど、そうじゃない。 こんなに素晴らしい家族がいるから、だから私は頑張れるんだ。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加