56人が本棚に入れています
本棚に追加
「…頼りないのかな、って。」
「そんな、…」
「うん、本当のことは分かったから。」
降旗は赤司を安心させるようににこ、と笑った。
「でも、一瞬赤司に会うことを躊躇ったんだ。」
「…………」
何も言えなかった。
言える訳がなかった。
いつのまにか降旗の髪を撫でていた赤司の手は止まり、そして震えていた。
それを感じとり、降旗は赤司の手をそっと包むように握りしめた。
「オレは、赤司からもらっているばかりで何も返せてない。このままでいいのかなって…」
降旗は赤司の手を握りしめたまま言葉を続けた。
赤司は黙ったまま、降旗の言葉に耳を傾ける。
しかし、赤司はここから先に出てくる言葉を聞くことを恐れていた。
あっけなく終わりがくるかもしれない。
僕は、耐えられるだろうか。
嫌だと思っていても声が出ない。
代わりにぎゅ、と目を閉じて小さな抵抗をした。
……………………やめてくれ、言わないでくれ。
そんな願いも儚く散り、オレ、と言葉を続ける降旗。
そして、
「それでも、赤司に会いたかった。」
「────────っ、」
それは、予想と反していた言葉。
それは、何処かで期待していた言葉。
「オレは、赤司が好きだよ。」
ああ、
君は、
僕に本当に欲しいものを与えてくれる。
いつだってそうなんだ。
僕にもう一度心を与えてくれたのは君だった。
光輝、僕はね…
赤司はぐっと降旗を引き寄せ、抱き締めた。
わわっ、と少し驚いたような嬉しそうな声を上げ降旗もまた、赤司の背中に手を回した。
「光輝、君は与えてもらってばかりだと言ったね。でも、それは違うんだ。」
今度は頬に手を添え、降旗の顔を上げさせた。
「……ち、がう?」
「そう、僕が光輝からたくさん貰っているんだ。君は僕に初めてをくれる。」
喜びを
痛みを
愛しさを
苦しさを
「僕も好きだ、光輝。」
最初のコメントを投稿しよう!