ゼロ距離

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「起立、礼。」 クラス長の声でがたがた、と椅子の音を立てながら起立し、挨拶をした。 きちんと礼をするものも居れば、形だけのものも居る。 後者には欠伸をした高尾も含まれていた。 (はあ、めんど。) 何故いちいち立って礼なんかしなければならないのか未だに理解できない。 そんなことを考えながらさっさと荷物をまとめてある場所へ向かった。 そのある場所とは、 「真ちゃーん、行こうぜ。」 緑間の教室だった。 すぐに目についたエメラルドグリーンの髪に左手のテーピング。 そして机の上には本日のラッキーアイテムなのかちょこんとくまのぬいぐるみがあった。 緑間がかわいいものを持ってるのがとても可笑しくて高尾は笑いを堪えるのに必死だった。 背が大きい緑間は当たり前のように一番後ろで、陽当たりのいい窓際の席に居る。 笑いが収まり、オレだったらすぐ眠くなるな、と一瞬考え緑間を見た。 (真面目な真ちゃんならそんなことしないか。) また少し笑っていると、いつの間にか目の前に緑間が立っていた。 「何を笑っているのだよ。不愉快だ。」 「ちょ、酷くねぇ!?」 いつものように当たりのキツい言葉を平気で吐く緑間。 そんな言葉ももう慣れて満更でもなさそうに高尾は笑いながら受け流した。
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