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「いくぞ。」
「いくぞって…それどーすんの。」
「返すに決まってるのだよ。当たり前のことを聞くな。」
「でも真ちゃん、あの子の顔見えてなかっただろ?」
そう言うと、ぴた、と動きを止めた。
まあだろうな、眼鏡かけてなかったし。
おそらく緑間はどうしようか悩んでいるのであろう、一向に動かない。
「あの子、オレと同じクラス。」
さっき見覚えがあるな、と感じたのはこれだった。
まさか自分のクラスに緑間を好いているやつが居るなんて。
最近では人気になってきた緑間。
噂でかっこいいと言われているのは知っていた。
好意まで持ってる子を見たのは初めてだが、おそらく他にも居るのだろう。
近寄りがたい空気があるが、話してみればそうでもないことを気付く人が増えた。
真面目な緑間は話しかければきちんと答える。
部活でも笑ってる時が増え、そしてそれは日常生活にも増えた。
時々見かけるが、男子と話してたり、女子に勉強を教えてたり。
そんな様子を見て、緑間が人と関わるようになったことが嬉しくなりつつ、苦しい気持ちもあった。
高尾に目覚めた緑間への思い。
知られてはならない、叶わない恋情。
それでも相棒としていられるならそれでいいと思っていた。
しかし、内心焦りつつある。
オレなんかどうでもよくなってくるんじゃないか ──────
「それを先に言え、戻るぞ。」
こつん、と頭を殴り、先に戻っていく緑間。
後ろ姿を見ながらさっき殴られた頭を擦る。
触れられているうちはまだ、大丈夫かな。
そう考えて、緑間の背中を追い掛けるように高尾も練習に戻っていった。
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