ゼロ距離

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「高尾ー呼んでるぞー。」 次の日の放課後。 突然自分を呼ぶ声が聞こえ、緑間の教室へ向かおうとした準備を止めて顔をあげた。 誰だ、と思い呼ばれた方へ行くとそこには見慣れた姿があった。 「…真ちゃん!?」 「煩い、喚くな。」 「いや、でも何で?」 わざわざオレの教室まで迎えに来たのか、と少し期待をしてしまった高尾。 しかし、そんな期待もあっさりと裏切られた。 緑間はきょろ、と高尾の居る教室を見回して、静かに手をあげた。 その手には袋が下がっており、中身を確認してみるとそれは昨日渡されたタオルだった。 「これを返すために来たのだよ。居るのだろう、ここに。」 まーそりゃ、と言って高尾も目的の女子を探した。 周りに友達がいながら一人だけこちらをじっと見ている女子が居て、すぐにあの子だと気付いた。 「居るよ、一番窓際にいてこっち見てる。」 そう緑間を見ながら言うと、緑間もその子の方へ目線を移した。 しかし、その子は緑間から見られた途端慌てて下を向いた。 あー好きなんだな、と何処か冷静に考えていると、横を通り過ぎる緑間が見えた。 止めることも出来ずにそのまま唖然と見送ると、緑間はその子の前に立ち、袋を差し出した。 周りがうるさくて聞き取れはしなかったが、女子の泣きそうな表情に良いことは言われなかったのだろうと察した。 暫くして緑間は高尾の方へ戻ってきて、行くぞと声をかけてさっさと部活に向かっていった。 緑間の後を追い掛けるため、すぐに自分の荷物を持って教室を後にした。 その時一瞬見えた女の子の辛そうな笑顔に安心した自分を最低だと思ったのは言うまでもない。
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