ゼロ距離

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「…お、高尾!」 「はい!」 「何をしている。帰るぞ。」 いつの間にか緑間は片付けをしていて、着替えに行こうとしていた。 高尾も慌ててボールを片付け、着替えに向かった。 …こうして、一緒に居れる。 それだけで良かったのが抑えきれなくなってしまった。 そろそろ、潮時なのかな。 そんなことを考えながら部室に入ると、明るすぎる光に目を細める。 そして見えたのは上半身裸の緑間の姿だった。 「…………っ!」 (いや、着替えてるのは当たり前なんだけど…!) あまりにも無防備な姿にさっと目を反らす。 だが、ついつい見てしまうのを止めることが出来ずちら、と盗み見た。 ちょうどシャツを着て、手首のボタンを締めてる最中だった。 シャツの合間から見える鍛えた体が高尾をいつも以上に刺激した。 (もうちょい後から来れば良かった…) 今さら外に出てしまえば変に思われるだろうと考え、暫くじっとしていた。 しかし、何時までも動かない高尾を変に思った緑間は高尾へ近付いた。 「何処か具合が悪いのか。」 「へっ!?」 緑間は高尾の頬へ手を寄せ、下を向いている顔を上げさせた。 「顔が赤いぞ。」 (緑間さんのせいです…!) そんなことは言えず、高尾はぱくぱくと口を動かすだけだった。 緑間の背の方が断然高く、高尾が見上げる形となり首を痛めつつあった。 大丈夫だから、とも言えず視線をさ迷わせていると、何故かだんだん緑間の顔が近付いてきた。 え、え、とあわてふためいていると、緑間は高尾の前髪をあげ、自分のおでこと高尾のおでこをこつんとくっつけた。 「熱は…ないようだな。」 高尾は不覚にもその行為にドキっとし、ふぅ、と心の中でため息をついた。 (心臓にわりーよ、真ちゃん…) 一瞬キスをされてしまうのかと思ってしまった。 目を閉じた緑間の顔が近付くとき、高尾の心臓は今までにないほど鼓動が大きかった。 もしかしたら伝わってしまうんじゃないか。 恥ずかしさと、嬉しさと、怖さ。 たくさんの感情が混ざりあい、よく分からないが涙が出そうだった。 その様子に気付いたのか、緑間はそっとおでこを離して高尾を見つめた。
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