ゼロ距離

10/18
前へ
/157ページ
次へ
「…好きなんですっ、緑間くんのことが!」 「─────っ!」 その言葉に驚き、危うく声を出してしまうところを手で押さえた。 まさか、告白現場に遭遇してしまうとは。 あのまま練習に戻れば良かったと後悔するが、すでに時遅し。 女の子の告白に胸を痛めた。 (オレには、そんな勇気ねーけど…) 少し羨ましくなってしまったのも事実だった。 そして、緑間がどんな返事をするのかが気になった。 緑間のことだから受け入れることはない、と確信する心ともしかしたら受け入れるかもしれない、という焦り。 ありえないよな、 真ちゃんが受け入れるわけない。 でも、もしかしたら、 その時オレはどうするんだ? ぐちゃぐちゃな感情に頭を悩ませ、そして緑間の返事を耳を済まして聞く。 頼む、受け入れるな、 頼む…! 「…ありがとう。」 ………終わった。 何もかもが終わった。 そうか、真ちゃん、付き合うのか。 まるで心にぽっかり穴が空いたような、そんな感覚だった。 高尾はそっと気付かれないようにその場を後にした。
/157ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加