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「高尾、緑間居たか?」
「いえ、見つけられなかったっす。」
大坪は高尾が戻ってきたことに気付き、緑間のことを尋ねた。
しかし、返ってきた声はあまりにも沈んでいて大坪がどうしたのかと声をかけようとしたとき、後ろから誰かが入ってきたのを見た。
そこに居たのはバッシュに履き替える緑間だった。
「なんだ、緑間。何処行っていた。」
「すみません、少し委員会のことで呼ばれていました。」
緑間の言葉に高尾はぴく、と反応した。
嘘つき、と高尾は胸が痛くなり、あえて緑間を見ないようにした。
「高尾?」
「…っ、オレ練習戻ります!」
自分の名前を緑間に呼ばれたとき、呼ぶなと思ったと同時にどくん、と心臓が動いた。
高尾は慌てて練習に戻り、何も考えないようにした。
緑間が不思議そうにこちらをじっと見ていることも気付かぬフリをして。
それからは、
いつもの居残り練習をせず、さっさと荷物をまとめ緑間と顔を合わせないよう帰った。
きっと鋭い緑間のことだから不自然に思ったに違いない。
だが、暫くは会いたくない。
自分の心が、落ち着くまでは。
家に帰った途端、すぐ自分の部屋に向かいベッドに倒れるように横になった。
「……っ、う、」
溢れ出す涙を止める術をオレは知らない。
心が痛くて、痛くて、
なかったことになればいいのに、と何度思ってもあの場面は鮮明に思い出された。
「もう、嫌だ…」
想うことが辛い。
緑間を、想うことが。
これで最後としよう。
本当に、本当の最後。
「…さ、よなら。」
さよなら、真ちゃん。
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