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「…………」
目を覚ますと、見えたのは白い天井だった。
目線を動かして辺りを見てみると、今居る場所が自分の部屋だと気付いた。
自分のベッドに横になっているのだと。
コンコン、
突然ドアを叩く音がし、掠れた声ではい、と返事をすると、現れたのは実渕だった。
「玲央…」
「征ちゃん!起きてたのね。」
実渕は赤司に近付いき、赤司の額に手を当てた。
振り払う力もなく、されるがままにしていれば、実渕の肩が震えていた。
「なんで笑ってるんだい、玲央。」
「…ふふ、ごめんなさいね。征ちゃんの頭を撫でるなんてなかなか出来ないから。なんだか不思議で。」
そんなことでにこにこ笑っている実渕につられて頬を緩めた。
そんな赤司に驚いて、そしてまた微笑んだ。
「うーん、まだ熱いわね。」
額から手を離し、代わりに一緒に持ってきた水にタオルを浸し絞ると、それを赤司の額に置いた。
水に濡れたタオルが少し冷たくて顔をしかめた。
「征ちゃん、具合悪いこと言わなかったでしょ。」
「…すまない、迷惑をかけたね。ここまでなるとは思わなかったんだ。」
ここまで、酷くなるとは。
あの時、まったく自分の体が言うことを聞かなかった。
そこまで自分の体は弱っているのかと思うと、練習量を増やさなければと考えた。
「…違うわよ、征ちゃん。」
「何がだい?」
「はぁ、やっぱり…。征ちゃんは最近働きすぎなの。私達のことを考えてくれるのはいいんだけど、あまり抱え込まないでね。くれぐれも練習量増やそうとか考えないこと!」
赤司は実渕の言葉を聞いて、目を丸くした。
なぜ実渕が分かったのか、
ただただ驚くばかりだった。
「分かるわよ、そんなの。一緒に居るんだから。」
………ああ、そうか。
繋がっている。
僕達はもうそんな存在になったのだと、
この洛山高校で。
以前の僕ならそんなことは思いもしなかった。
ただ勝つために手段は選ばない。
心など二の次だと、考えていたあの頃の自分はもういなかった。
それを変えたのは、
もう一人 ──────
『………赤司!』
ふと頭に大切な人が浮かんだ。
会いたい、と一瞬で求めてしまう、そんな大切な人。
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