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「あ、かし?」
目をゆっくり開くとそこには降旗の姿があった。
「…光輝かい?」
うん、うん、と何度も頷きながら、降旗は肩を震わせていた。
赤司は降旗の頬へ手を寄せ、涙を拭った。
「…何故ここにいるんだい?」
ゆっくりと尋ねると、降旗は突然顔を上げ、きっ、と睨み付けるように赤司を見た。
そんな顔も愛らしいと思ってしまうのは、風邪のせいなのか、本心なのか。
おそらく後者だろう。
「…何で?そんなのっ、大切な人が病気になってたら心配にもなるだろっ…!!」
光輝はそう叫んでまた下を向いた。
「すまない、メールをしたんだが…」
「…黒子にでしょ。」
「え?」
返ってきた降旗の言葉は赤司を困惑させた。
何故そこに黒子が出てくるんだ?
思考を巡らせていると、降旗が口を開いた。
「赤司、寝込んでることオレじゃなくて黒子にメールしただろ?」
降旗は少し怒りを見せながら、そして哀しみを噛み締めるような表情を見せた。
「違うよ、僕はちゃんと…」
「なんだよそれ。黒子は…!」
──── ピリリリッ
突然鳴ったのは赤司の着信音だった。
表示されていたのは、『黒子テツヤ』という文字だった。
「出なよ…」
降旗の辛そうな声に押され、電話に出た。
『もしもし、赤司くんですか?』
「ああ、そうだよ。」
『よかった、元気そうですね。』
少し音が漏れていて、静かな赤司の部屋ならば降旗にも充分伝わってしまう。
黒子の言葉に降旗はまた泣きそうになり、それを堪えた。
『もしかして、降旗くんもいますか?』
その言葉にぱっと顔を上げ、驚いた様子で携帯を耳に当てた赤司に目を向けた。
何故知っているのだろうか、そんな疑問をのせて。
「いるよ。どうかしたのかい?」
『いえ、いるならそのまま聞いてください。』
黒子の声が聞こえて、降旗は一歩赤司から遠ざかった。
まるで聞きたくない、というように。
ふるふる、と顔を横に振り、また下を向いた。
『降旗くん、別に別れろとか言いませんからね。』
え、と降旗は少し声を上げ顔を赤らめた後、すぐに安堵の顔へと変わった。
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