射手

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「民主和党のあの男は、我らが主導者のやり方を、『行き過ぎた悪性の突然変異だ』などと非難した。我々の主導者の偉大な導きをだ。それに対しての君の制裁は、下されて当然だったのだ。これは誇るべきことだぞ」  話を続ける軍服は、さらに気分を高揚させて語りだした。あの男、先日ワシ頭をもってして狙撃したスーツの男のことだ。  国の、キメラ症患者のためとはいえ、この軍服の陶酔具合に彼はどこか気味の悪いものがあるが、一応は上官であるこの男にそれらしい返事をしてみせた。 「我らが主導者は、キメラ症ゆえに優秀。それゆえ、キメラ症はヒトの次の人類なのだ。わかるだろう?進化が停滞してしまったヒトより優れた君たちの身体能力、感覚。私はヒトだが、あのお方の偉大さに惹かれ、こうしてキメラ嫌い共を粛清すべく日々思案しているのだ。」  椅子から立ち上がる。「だが、君も殺しや報復ばかりが仕事では飽きるだろう。あの男に限っては例外だが、殺しばかりが我々の有能さを示す手段ではない、というのが主導者のお考えなのだ」  突然話題がずれた。この男にはよくあることなのだが、今日は少しばかりワケが違っている。  軍服は、これまた演技じみた動作で、机の背後にある窓に向かって立ち、言い放った。 「何が言いたいかというとだな、フランシス君。君に、国際キメラ症スポーツ競技会に出てほしいのだ」  そう言われて、最初何がなんだかわからなかった。きょとんとして、クチバシは間抜けに開いたままにしてしまった。別に驚いたわけではなく、本当にワケが分からなかった。  混乱しているワシ頭をよそに、軍服は続ける。 「かれこれ十年前からか、かねてより検討されていた、キメラ症のためのオリンピックがついに行われるのだよ。長いことキメラ症患者のスポーツ競技参加は禁じられてきたが、ようやく我々の力を示す機会がやってきたのだ。和党の連中も、国際的な非難に怯えて参加を決めたしな。君もそろそろ表舞台に出て活躍して良いころだ。我々キメラ主義の星として活躍してほしい。」  まったくもって、何をすれば良いのか分からない。自分がワシ頭で羽毛を生やした体でしてきたことといえば、弓を使って、キメラ症患者を認めない人間を殺すことぐらいだ。身の回りの世話ぐらいはさすがに自分でやるが、そんな自分に何が出来るんだ。そう思っていた。
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