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「なるほど…それで雨の日は来なかったんですね。」
少年時代、自主訓練の相手をしてくれていた黒髪の科学者…クロヴィスはその日の光景でも見るように、綺麗な赤目を細めながらそう言った。彼は自身の前髪で左目を覆うようにしているので、実際に見えているのは右目だけだが…。
ここはラクトス軍第1班の休息室。キッチンや丸いテーブル、ソファなど
ちょっとした休息には丁度良い部屋だ。もっとも、ここを多く使うのは俺と
クロヴィス、そしてこいつの部下である少年科学者2人だ。
今は訓練も無く、戦闘に出る日でもないのでこうして昔話をしている。
話を戻すが、上官に引き止められた日、クロヴィスは暫く訓練場所に居たらしい。
近くには廃墟と化してはいたが、まだ屋根の残っている建物があり、その中で非難していたと後日の訓練で言っていた。
「すまなかったな。」
「いえいえ。…それより、お話はまだ途中でしょう?どうぞ、続きを。」
にっこりと微笑みながら、クロヴィスは続きを待っている。
「…。」
「雨の日が嫌いな理由。少年時代の貴方にはそれだけでも好きになれなかったでしょう。訓練がしたくても思うように出来ないのですからね。…でも、それだけではなかったはずです。貴方が雨を嫌う理由は。」
先ほどまでの笑顔はどうしたのか、次第にクロヴィスは真面目な表情となった。少し重たそうなまぶたの奥に、妖しく赤い目が光っている。
「…映えるんだよ。」
静かに、俺は言い放つ。
クロヴィスはじっと、次の言葉を待っているようだ。
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