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「お前は何故、私の言葉に言葉を返す。何故言葉を話す」
「ちょ、ちょっと!? 待ちなさい、私が貴方と会話出来るのがそんなに不満?」
「ん……ああ、言葉が足らなかったな。私には色の声が聞こえるが、色は私の問い掛けに答えないのだ。だが――」
「私は貴方の言葉に答え、会話まで成立している、と。その理由が気になるのね?」
私は黙って頷き、メイの答えを待った。
とは言っても、有益な情報が手に入るとは思っていない。
メイからしても、私のような色と話せる人間と出会ったことが大きな事件だっただろう。
当然ながら、自分も相手も振り出しに立ち尽くしている最中なのだ。
「そうね……」
聞くだけ無駄だ。そうは分かっていても、聞かないよりは疑問の種が一時的にでも消えるのだ。
「心当たり――あるわ」
このように、何の価値も無い言葉ですら――。
「今、何と?」
「理由かは分からないけれど、心当たりなら……って」
まさか、嬉しい誤算が訪れるとは思ってもみなかった。
心当たりだったとしても、情報には代わり無いのだ。私はそうメイに言って、ありがたく聞かせてもらうことにした。
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