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「何だ……誘拐か? 生憎お前らみたいなのに渡す金は無いが……」
「いやーん、ちゃうねん。これは研究で、あんたは実験体やね。すぐに帰したるから安心せぇ、な?」
そう言われ口をつぐむ。実験体という言葉が気になったが、すぐに帰してくれるなら何よりだ。
実験体という言葉のせいで、五体満足で帰れる気が薄れているのだが。
部屋には一人、研究者風な白衣を身にまとった女……なのだろう。忙しなく動き回っている。
中性的な顔で性別は分からないが、声を聞く限りは女だった。
そう考えると自宅で私を気絶させた男も、男に見えただけでこの女なのではないかと勘繰ってしまう。
「準備終わりぃ! はい薙尋、見るが良いさ!」
馴れ馴れしく名前で呼ばれた私は、女の指差す方向に目を向ける。そこにはテーブルがあり、皿があり、蒸かし芋があった。
まるで意味が分からない。
「何だあれは」
「蒸かした芋です! って……もっと無いの!? 薙尋の親友とかさ!」
そう言われ、私は戦慄した。
メイがじゃがいもだったことを思い出し、その蒸かし芋を視界に捉える。
幸い、蒸かし芋に色は無くメイではなかったが、これは余りに悪質な嫌がらせではないか。
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