じ ゃ が い も

9/10
前へ
/10ページ
次へ
「何のつもりだ……何が楽しい!」 「……ま、そう言うわな。ウチやって手一杯で、憂さ晴らしの感じもあって……やってもうた。この罪は、ウチが体で払ったる!」 いきなり白衣を脱ぎ捨て、その下のシャツにも手を掛ける。その狂行に私は目を逸らすが、逸らした先には既に女が回り込んでいた。 「一体何をする気かは考えたくもないが……興味は無い、止めてくれ」 「据え膳食えや、男やろ!!」 「無理よ、彼は欲を絶つことに成功した断食系男子だから」 先程の声に、私は体を震わせた。 この現状で、最も無事を確かめたかったものの声。声のした方向に目を向ける。 そこにはキャスター付きの小皿に入った『茶色』のじゃがいも――メイが居た。 「め……い?」 「ごめんなさい、何もかも私のせいなのよ……」 「負けた……? じゃがいもに負けたっての……?」 「メイのせい……? 一体何がだ?」 そしてメイと女に説明された内容は、余りに現実離れしたものだった。 研究者である女がふとした拍子に、人間と意思疎通の出来るじゃがいもを作ってしまったらしい。 だが、当然ながらじゃがいもと意思疎通の出来ない女は、どうにかして疎通が出来るようになる薬を作った。 しかし、その時にはメイは何故か出荷されていた。 大変だ、食べられる前に取り返さなければと躍起になって、結果今に至るというらしい。 つまりは。 「メイではなく女、お前が悪い」 「きびしーっすな、Mに目覚めそうだ」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加