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「……」
一瞬、吉川さんの顔が固まった。
そして次の瞬間、ふっとそれが緩み、
「計算じゃないから、すごいですね。
道野さんは」
と、さらっと言われた。
「へ?」
「いえ。
ちょっと失礼」
「え」
ふわっと、正面から吉川さんの両手が伸びて来て、私の首を包む。
ずいっと、吉川さんの顔がドアップになった。
「……っ」
ええっ!? 何っ!?
私は、急なことに硬直し、息の仕方を忘れる。
両肩に吉川さんの両腕が乗っかって、まるでこの体勢は、キ……キッスの……。
ジー……。
ガッチガチに固まった私の顔のすぐ後ろで、金具らしき音がする。
真正面至近距離で、私の顔の高さと同じ位置まで屈んだ吉川さんが、
「正面からなら、後ろ、見えませんので」
と、真っ直ぐ私の目を見ながら言った。
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