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広いワンフロアの社内。 男性社員はほぼ外へ食べに行き、残る他の課の数人の女性社員が固まってデスクでお弁当を食べている。 私が黙ると、ちょっと離れたところで、 「やだー!それってプロポーズじゃーん!」 と、楽しそうな話題と笑い声が聞こえてきた。 意味もなく、自分が惨めに感じる。 「確か、お試し期間って、今月いっぱいでしたよね?」 「うん」 少し苦々しい顔をして聞いてくる葵ちゃんに、低いトーンで返す。 「今月お互いを知って、というか吉川さんが先輩に自分を知ってもらって、月末にお返事、ですよね?」 「……多分」 口を尖らせながら、小声で返事をする。 デザートのプリンを食べるのに使ったスプーンの袋で手遊びをしながら、なんだかいじけた子供みたいに。
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