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夕方になって、仕事上がりの時間になっても、結局吉川さんから電話はこなかった。 「……」 帰り仕度も終わり、ロッカーをパタンと閉めると、 「……。 忙しかったんでしょうね、吉川さん」 と、葵ちゃんが私の顔色を窺いながら言ってきた。 「そうだね」 もしくは、あの電話に出た男が伝言し忘れたのか。 はたまた、吉川さんは私の声を聞きたくないのか……。 後者の可能性を考えると、私の頭の中のネガティブ思考回路がどんどん発展しそうになる。 慌てて、 「帰ろう、葵ちゃん!」 と、笑顔を作って言い、バッグを肩にかけた。
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