5503人が本棚に入れています
本棚に追加
夕方になって、仕事上がりの時間になっても、結局吉川さんから電話はこなかった。
「……」
帰り仕度も終わり、ロッカーをパタンと閉めると、
「……。
忙しかったんでしょうね、吉川さん」
と、葵ちゃんが私の顔色を窺いながら言ってきた。
「そうだね」
もしくは、あの電話に出た男が伝言し忘れたのか。
はたまた、吉川さんは私の声を聞きたくないのか……。
後者の可能性を考えると、私の頭の中のネガティブ思考回路がどんどん発展しそうになる。
慌てて、
「帰ろう、葵ちゃん!」
と、笑顔を作って言い、バッグを肩にかけた。
最初のコメントを投稿しよう!