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「少し、雰囲気変わりました?」 お蕎麦屋さんに着き、おしぼりで手を拭きながら聞いてくる吉川さん。 「そうですか? 自分では分からないですけど……」 座敷の個室。 正面にいる吉川さんをなかなか直視できず、テーブルの上のお品書きを見ながら答える私。 葵ちゃんに協力してもらってメイクも頑張ってるし、服装にも気を遣うようになったのに、そうかしら?感をわざと出す。 「そういうラフな感じもいいですね。 似合っています」 サラリと言われたその言葉に顔を上げると、以前同様、涼しげな顔の吉川さんが頬杖をついて私を見ていた。 よっしゃー!って思ったのも束の間、彼の目を見ると、どうも分が悪くなる。 恋愛に勝ち負けなんて無いはずなのに、何故か交際を申し込まれたはずの私の方が負けているような気になる。 「忙しかったんですか?最近、お仕事」 負けてばかりはいられない。 昼間の葵ちゃんの言葉を思い出し、女の私も頑張らねばと、意を決して聞いてみる。 「いえ、いつもどおりですが」 ……はい、完敗。 お茶をすすりながら、何てことないように答える吉川さん。 私は、音沙汰なかった2週間のことを思い、ずーんと背中に石を乗せられたような気持ちになった。 「会いたかったのですか?私に」 「え?」 ポン、と何気なく目の前に差し出されたセリフ。 最初は上手く飲み込めなかったが、ゴクンと意味を理解すると、ボカンと頭の中で音がした。 「っや。あの。その。それは」 「冗談です」 「あ、あれ?ハハ。アハハハ」 フ、と口角を上げた吉川さんに、空笑いを返す自分。 バカ結月。 会いたかった、って素直に言えばよかったのに。
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