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次の日。 「道野」 「はい」 部長に呼ばれて、デスクの前まで行くと、これとこれを今日中に、と仕事の指示を受ける。 いつものことながらカバの指示は、急な仕事が多い。 もう慣れっこになって、はい、と作り笑顔で書類を受け取る。 自分のデスクに戻ろうとすると、あ、と部長が呼び止めるので、再度振り返る。 「道野、お前最近色気づいてんな」 「……」 ザ・セクシャルハラスメント。 カバは歳の割にやたらとツヤツヤした顔で、ヒゲの剃りあとを指で撫でながら片方の口角を上げた。 色気がある、と、色気づく、では込められている嫌味度がだいぶ違う。 私は、ピキ……ときたが、顔に出さないようにして、 「そうですか? 自分では分かりませんが。 失礼します」 と、部長のデスクを後にした。
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