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「7時半か……」 もっと遅くなるかと思ったけれど、意外と早く終わった。 仕事が早くなってきたことを実感し、終わった充実感と共にホクホクした気持ちで、トントン、と書類を整える。 「よし、帰ろ」 既に帰ったカバのデスクに作成した書類を置き、帰り支度をする。 数人残っている男性社員に挨拶をして、事務所を後にし、エレベーターに乗った。 チーン、と鳴り、1階に着いたエレベーターの扉が開く。 下を向きながら一歩外へ出ると、私と入れ違いに乗り込む、ダークブラウンの光沢のある靴が目に入った。 あれ?見覚えが……。 そう思って顔を上げようとすると、 「あ」 という、短く低い声。 「お疲れ様です」 続くその声に、私はようやく上げ切った顔を赤らめた。
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