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「お、お疲れ様です。
なんで、吉川さん……」
いつものキリッとしたスーツに、少し固めた髪。
会社のビルの中で吉川さんに会う、という不意打ちに、私は城田さんの件はどこへ行ったのか、かなり舞い上がり、同時にあたふたする。
あぁ、こんな化粧崩れマックスの時に、恥ずかしい。
でも、嬉し……。
「今夜は橋野社長と会食の予定がありまして。
お迎えに上がったところです」
……。
一旦エレベーターを見送った吉川さんは、まだ仕事モードなのか、あまり表情を崩さずにそう答えた。
あ、……あぁ、社長、ね。
緩んだ頬が、重力によってまた下がる。
一瞬でも私に会いに来てくれたのかと思ったのが恥ずかしい。
接待みたいなものかな。
顧問先の社長と会食、って、よくあることなんだろう。
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