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「ほら、やっぱり噂どおりじゃん。
早いとこ手を引けって、道野」
「先輩、大丈夫ですって。
何かわけがあるんですよ」
次の日の仕事帰り。
近くの居酒屋で、笹原君と葵ちゃんが両極端な意見を私にぶつけてくる。
ねぎまを食べ終えた串をカジカジしながら、私は2人の向かいの席で、う~……と唸る。
笹原君に飲みに誘われ、思い切って昨夜の件を相談したところだ。
「中園、先輩だからって気を遣ってそんなフォローしなくていいだろ」
「いえ、私は吉川さんが二股かけるような人には見えないんです」
中園、とは葵ちゃんのことだ。
当事者の私よりも、2人の言い合いの方がエキサイティング。
「ていうか、それよりさ。
かけ直さなくていいの?道野。
城田さんに」
「……ギク」
わざと声に出してちゃかしたが、私は昨夜からずっと気になっていることを言われて、心臓をギュッと潰されたような気持ちになる。
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