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「……」 シーン、と辺りが静まり返った気がした。 いや、それは私の頭の中だけで、実際には音が溢れているんだろうが。 城田さんの『社長よ』の語尾だけが、私の中をリフレインしながらぐるぐる回る。 しゃ、……社長!? それがようやく一周して脳内に戻ってきた時、グワン、と中国の映画でよく聞くドラの音が鳴った。 「そ、そーなんですかっ!?」 「本当に知らないのね。 言ってたと思ってたわ。 私の母の弟よ、社長は」 前に流れた長いストレートの髪を耳にかけ直し、城田さんは少し呆れているように答える。 そうか。 昨日、確かに吉川さん、うちの社長と会食って言ってたし。 「……」 あれ? でも待てよ? なんで吉川さん、社長にわざわざ私のことを言う必要が……。
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