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再度紅茶に口をつける城田さん。 綺麗に手入れされた爪。 淡い薄紫のネイルが白いティーカップに映える。 私は軽い眩暈を覚えながら、それをぼんやり見つめる。 「彼ときちんと知り合うのに十分な時間をかけたわ。 お互いの趣味の話や仕事の話、将来についての展望や過去の話、それから彼が女性を信じられない理由まで」 「……」 私は既に、視線を自分の手元へ落としていた。 一口も飲んでいないブラックコーヒー。 湯気は消え、私の心のように少しずつ少しずつ冷えていっている。 身長体重を知ったからって、何になるんだろう。 私は、あの日噴水の前でした質問の無意味さに、改めて心の中で溜め息をついた。 「会うたびに気持ちは募ったし、吉川さんも歩み寄ってくれ始めたわ。 それで、確信したの。 私なら彼の女性への不信感を払拭させてあげられるって」
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